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仙台高等裁判所 昭和24年(を)561号 判決 1950年6月05日

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

判決要旨

冒頭陳述とは訴因たる事実を構成する個々の事実及び訴因たる事実の存在を間接に推測せしめるに足りる個々の事実の陳述をいうもので簡単な事件の場合は格別被告人の数が六名もあつて起訴事実が十一件もある場合には検察官の冒頭陳述を欠いて審理した時は被告人に適切な防御方法を講ずることが出来なかつたものと認められるので其の訴訟手続は違法であり原判決破棄の理由となる。

理由

いわゆる冒頭陳述とは訴因たる事実を構成する個々の事実及び訴因たる事実の存在を間接に推測せしめるに足りる個々の事実の陳述をいうものと解すべきであるから簡単な事件たとえば犯罪事実が一個に過ぎない窃盗事件のような場合は格別、本件のように被告人が六名もあつて其の起訴事実が十一件の多きに達する場合においては検察官の冒頭陳述によつて各被告人に対する関係部分について如何なる点を立証せんとするものであるかを判然させなければ被告人等としては各自己の起訴事実につき適切な防御方法を講ずることが出来ないのに原審は漫然これを看過して審理し判決したのであつて其の訴訟手続は違法であり、其の違法は被告人河澤寄司男のみならず共犯者たる被告人菊田己之太郎に対する関係においても判決に影響を及ぼすこと明らかであるから原判決はこれを破棄する。

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